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2.美濃地方のタイル生産

タイル生産の第一歩

明治44年(1911)、多治見町の長谷川淳一が、登り窯を使って疑石タイル(磁器質タイル)を焼いたといわれるが、これが美濃焼地域における、タイル生産の第一歩とされている。長谷川淳一は引き続き、研究・生産活動を発展させ、後の日本タイル株式会社を創設することになるが、その間、ドイツ人ワグネルの技術が活用されたといわれる。
タイルの形状は、大小さまざまであるが、一般的に小型のものを「モザイクタイル」と呼んでいる。
このモザイクタイルは、明治末期より愛知県の常滑地方で生産されていたが、大正15年(1936)、多治見の加藤重保が、現在の京町に日本建陶合資会社を創設、当地域で最初のモザイクタイルを生産されたとされている。しかしこのときのモザイクタイルは、まだ無釉のものであった。

施釉テラコッタの実用化

昭和に入ってから、当地域のタイル生産活動も一段と発展し、各地にタイル生産の創業がみられ、それに伴って新しいタイル製品の開発も現われた。
昭和6年(1931)、笠原町の山内逸三が、長い研究努力の結果、初めて釉薬を施したテラコッタ(大型のタイル)の実用化に成功した。このとき生産された施釉のタイルが、建築会社大林組に納められ、大阪ガス会社のビル建築に使用された。これより後昭和10年ころ、施釉のモザイクタイルの生産も始めるが、山内逸三による施釉タイルの開発が、笠原のタイル産業発展はもちろん、美濃焼地方全般のタイル産業発展に、大きく貢献することとなった。
山内逸三は、明治41年(1908)年5月、笠原町の茶碗製造業家に生まれた。大正12年(1923)多治見工業高校を卒業して、京都にあった国立陶磁器試験場へ入所。以来京都にて、テラコッタ・モザイクタイルの生産研究に励んだ。昭和4年笠原町に帰り、製陶業を営みながら、研究努力の結果、施釉タイルの生産・実用化に成功した。
山内逸三の開発した最初の施釉タイル(テラコッタ)は、一辺が14.5cm、厚さが1.5cmのもので、磁器質の素地で、石膏型による湿式の手起しであった。施釉は成形品を並べ、乾燥後、一個一個手で掛けたが、後に薬剤散布の噴霧器を使ったという。焼成は酸化炎焼成であった。
素地坏土については、笠原川の水車で粉砕した石粉(長石)に生田・下石・大畑の粘土を混ぜて使い、色釉の色素つくりには、高田徳利や焼酎瓶などを使って細粉化したという。釉薬に混ぜる灰は、近所の家のかまどの灰を貰い集めたりして、新製品の開発には、いろいろと苦労があったようである。
山内逸三は、後年陶板による陶壁づくりなども手掛け、役場・中央公民館・陶芸活動のほか、笠原陶磁器工業協同組合の理事長や、町会議員などの公職も歴任し、長年の功績によって、昭和52年黄綬褒章をうけた。
昭和の初めは、食器類など一般の焼き物は不景気であったが、タイル生産は活気があった。しかしこのころは、タイルはまだ奢侈品扱いとされ、高率の物品税も課せられ、一般家庭で使用するには高価すぎた。このために、タイルに対する国内需要も、あまり増加しないうちに、やがて戦時体制を迎えることになった。せっかく発展しかけた昭和以後のタイル生産も、戦時中衰退の一途をたどるばかりで、昭和19年ころには、3〜4軒のタイル工場がみられるのみであった。
 

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